東方の夜明け

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2011年 04月 15日

Another possibility ~ カイ長様はメイドさん

※このSSはフィクションです。
※登場する人物、地名、団体名(んなもの出ねえ)、シチュエーション、メイドさんは架空のものです。(俺だけの中で良い)
※龍光寺カイ誕生日記念 とみせかけたかもしれないSS





一波乱があった3月中頃の事件から、約1ヶ月後のある休日。
喫茶店「月海」内には神北 勇と最近新制服として採用されたメイド服を着込んだ語堂 つぐみ、そして同じくメイド服を着込んだ龍光寺カイの三人だけしか居なかった。
それもその筈、まだ店は開店前の状態であったのだ。
現在の時刻は9時。喫茶店が開店する時間である10時までには、1時間程余裕がある。
店に入り、メイド服に着替えた後のカイは、どこか落ち着かないといった様子であった。
「な、なぁ…。」
その所為か、誰にでもなく声をかける。
「どうしたよ。」
「どうしたの?」
二人が反応すると少し驚いて、カイはバツが悪そうに頬を指で掻いた。
「いや、その。この服を着てやらないとダメなのか、仕事…。」
そう言って、彼女は改めて今着ている服を見回す。
つぐみとカイが着ているメイド服、と言ってもそれは今流行りのゴテゴテした様なものではなく、一昔前の所謂エプロンドレスというものであった。
それでも普段着ない様な服装だからか、カイにとっては少々恥ずかしい様で、見回す動きもどこかギコチない。
そして頭にも当然ヘッドドレスを付けており、そちらの方も気になるのか慣れない手つきで触っている。
「だめよ。私だけ恥ずかしい思いしたくないんだから、先輩命令として従ってもらうからね。」
「うぐ。」
つぐみにピシャリ、と一蹴されて苦虫を噛み潰した様な表情になるカイ。
それを見て勇はくっくっくっ、と笑いを堪えている。
「な、なんだよ。笑うなよなイサミ!」
「とと、悪い悪い。でも良いじゃん、不良で強気なメイドってのはつぐみちゃんとはまた違った、良いアクセントがあるね。」
カイが食って掛かりそうになるところを、慌てて諌める勇。
彼女も、そこまで突っ込むつもりは無かったのか直ぐに体を引いた。
ちなみに、”イサミ”というのはカイだけが呼んでいる勇の呼び方である。
元々カイには「ユウ」という知り合いがおり、そちらの方が慣れ親しんでいたのもあって、同じ読みの名前であり後で知り合った勇とは区別を付ける為に、そう呼んでいるのであった。
「アクセントって…なんだよそりゃ。」
「どちらにしても、あんな啖呵を切ったんだ。自立するには多少の恥は掻き捨てってね。」
「わ、わかってるよ!ったく。」
はぁっ、と強く息を吐いてカイは目を凛々しく光らせた。どうやら覚悟を決めたらしい。
それを見て勇とつぐみが微笑む。
「それじゃあ、軽く仕事内容を説明していくわね?」
時間は、開店まであと50分を切った所であった―。

……………

何故、カイがつぐみの喫茶店で働くことになったのには理由がある。
そもそも事の発端は先月、3月のことであった。
勇がきらめき高校の生徒として2年生も終わりに近付いたある日の事である、彼は知り合いであり先輩でもある皐月 優の口から「カイが海外留学されそうになっている」と聞かされたのである。
カイとは2年からのクラスメイトでもあり、1年からそれなりに親交があった優と知り合いという事と、彼自身の人柄も手伝って直ぐに打ち解けていた。
そこから、彼女の境遇や悩みを聞いてたりはしていたのだが…事が突然過ぎたのである。
平日であったにも関わらず、急いでカイの元へと向かった二人はそこで一悶着の末にカイを解放し、忠貴を説得するのだが…そこはまた別のお話。
かくして、カイはきらめき市に残ることになったのだが、そこからがまた大変であった。
龍光寺家からの独り立ちを宣言した以上、ここから先は全て自分でどうにかしないといけない。
そこでまず思いついたのは金であった。一人立ちする以上、これが無いと何も始まらない。
一応、高校を卒業するまでは今の住まいであるマンションに居てくれと忠貴に言われており、卒業までに十分な蓄えを持つ。それが今彼女にとってやるべき事であった。

……………

「ひと通りはこんな感じ。まぁまずはお客さんから注文取るとこから始めておきましょうか。」
1ヶ月くらい前の事を思い出して居た勇は、つぐみのその言語で意識をそちらに戻す。
彼が時計を見てみると、あれから10分程経過していたらしい。時計の針は40分近くを指していた。
カイはつぐみから仕事の説明を受け終えた様で、頭の中で整理しているのか手を口に添えてブツブツと何かを言っていた。
「そこまで深く気にしなくて大丈夫だって、気楽にやんなよ。…そうだ、折角だし彼を客に見立てて練習してみる?」
そう言ってつぐみが視線を向けたのは、頬杖をついて二人を見ていた勇であった。
「へ?」
「あ、確かに…。慣れた相手だから勝手は違うかもしれないけど、お願いできるかな、イサミ。」
「ん、僕は別にいいけど。」
勇は頬杖をついていた手を下ろし、改めて椅子に座り直す。
それを見てカイも姿勢を直し、エプロンドレスのポケットから伝票を取り出す。
「え、えと、いらっしゃいませ…その、ご注文は。」
慣れている相手とは言ったものの、練習とは言えども初めての客商売であるカイにとって、高い緊張を生む。そのせいで声は若干裏返ってしまい、上手く発言できなかった。
その様子を見て、勇は少しからかおうかと考えたが、取り敢えずまずは普通に応対する事にした。
「そうだなぁ…じゃあアイスココアひとつ。」
「アイス…ココアですね。ご注文ありがとうございます。…どうだ?」
ゆっくりと注文を伝票にメモした後、おずおずとカイが聞いてきた。
その表情も、どこか自信がなさげである。
「うーん、ちょいと恥ずかしさが混ざっている感じかなぁ。まさか僕相手でもちょいとカチカチになってるとは。」
「うん、普段の様な感じでやれば丁度いいと思うんだけど…慣れかしらね、これは。」
「う、悪い。」
「まぁまぁ、まだ初日だし気長に行きましょうよ。」
申し訳なさそうな顔になるカイに、つぐみは励ましながら肩に手を置く。
それに勇気づけられたのか、カイは「ありがとう」と微笑んだ。
「そうそう、もうちょい気楽に行こうぜ!」
そう言いながら、勇もつぐみと同じようにカイの方へと手を伸ばす。
彼も肩へ手を置くのかと思えば、違った。
さわりさわり。
「!!」
「あっ!」
彼が手を伸ばしたのは、いい具合の形をしているカイのお尻にであった。
そこを手で軽く叩いたかと思えば、控えめ…というよりも優しげに撫で回す。
当然、それを易々と受け入れる筈もなく、カイは慌てて飛び退く。
振り向いたその顔は真っ赤に染まり、勇の事を睨んでいた。
「な、なにしてんだ!」
「なにって、軽いスキンシップ?…つぁ!」
怒り声で訊くカイに対して、手をワキワキを動かしながら返す勇を、つぐみがどこからともなく出した本の角で容赦なく頭を殴る。
「ちちち…つぐみちゃん、流石に角はどーかと思うんだけど。」
「あ・ん・た・が!バカな事するからでしょーが!何セクハラしてるのよ!」
「この緊張した空間を解そうとした、と言ってほしいな。まぁちょっと僕得なやり方ではあったけど。」
カイの尻の感触を思い直しているのか、それに触れた右手の指を事細かに動かしている。少しとはいえ、確かに触ったその表情は満足そのものであった。
「…!お前!」
「うぉっと!」
突然、掴みかかろうとしたカイの手に反応して、勇は大きく体を反らす。
危うく服を掴まれそうになったが、避けたことで指先が掠るだけで終わった…訳でもなく、もう片方の手が勇へと掴みかかる。
しかし、勇はそれを手で受け止める。更にまた片方の手が伸びてくるが、それも同じように受け止めた。
ギリギリ、とそんな擬音が聞こえてきそうな状態で二人が睨み合う。
「あたしの…し、尻に!触るなんて、覚悟は出来てるんだろうな…?」
カイは笑顔で、しかしその瞳は勇の方を睨んでいる。勇も、それから目を逸らさずに野性的な笑顔でカイの方を見ていた。
「そんなもの、カイ相手に必要ないね。しかし良い触り心地だったぜ、もう一回触りたい位だ。」
「んなっ。」
勇の言葉を聞いてカイの顔が更に真っ赤に染まる。
顔も戸惑ったものになり、怒りよりも恥ずかしさが勝ってきたらしく手の力が徐々に抜けていった。
そして手を放す。
「…ったく、スケベなのも通り越すと呆れるな。」
「褒めても何も出ないぞ。」
「褒めてるわけないでっしょ!」
スパーン。
景気のいい音が喫茶店内に響く。つぐみが何処からかスリッパを出し、それを勇の頭へと当てた音であった。
「痛え!…すげえ効いたじゃないか。」
「全く、あんたってバカは…彼女が居るくせに何で他の子にそういう事するのよ!」
「それはだな、そこにロマンという双丘がある限り…痛ッ。」
再び、つぐみがスリッパで頭を叩く。今度は先程より優しい叩き方だった。
「呆れた…まぁいいわ。この事、皐月さんに言っておくからね。」
皐月さん。その言葉を聞いて勇の顔が強張る。
明らかに、先程の態度とは違う、余裕の持てない雰囲気がそこにはあった。
「げ、それは勘弁してくれ。」
「ダメよ、一回お灸を据えてもらいなさい。」
「う、うあー…。」
ガックリと肩を落とす勇。
流石に調子に乗りすぎた事を後悔し始めてる風だったが、全てが遅かった。
「…なるほど、こういう時は優の事を持ち出せば良いのか。」
カイは、そんなやり取りを見て納得したように小さく頷いている。
その顔は先程とは打って変わって、勇の弱点を見つけたお陰でイヤらしく笑っていた。
「そうそう、コイツ皐月さんには弱いから、何かしらチラつかせて置けば大体は抑制できるわよ。」
つぐみがそう言って笑うと、カイも「違いない」と釣られて笑った。
―出会った当初は誰に対しても視線がキツい印象があった彼女が、最近は色んな人に対して友好的に交流をしている。
色々と事件があったとはいえ、彼女なりに良い変化だと勇もそんな彼女を微笑ましく思った。
けれど、それを言葉には出さず、彼は頭を掻いて今思い出したかのように口を開いた。
「そういや、時間は大丈夫なのかい?」
「…あ。あと10分じゃない。急いで開店準備しなきゃ!ほら、カイも!」
勇の言葉を聞いて、時計を見たつぐみはカイを連れて準備を始める。
カイも戸惑いながらも、どうにかそれに付いて行っていた。そんな二人を見て、勇は微笑ましいものを感じながら先程の席へと再び座る。
(これから、ここも更に面白いことになりそうだ。)
頬杖を付き、彼はそんな事を思いながらノンビリと開店時間を待つ。
店内は、慌ただしくエプロン姿のつぐみとカイが走り回っている。
(…見た目的にも、更に良い保養になりそうだ、にしし。)
更にそう付け足して、勇は顔をだらしなく緩ます。
開店まで、時間は5分前に差し掛かるところであった。

尾張

あとがき

カイ誕生日記念SS…だけどつぐみちゃんの方が目立ってる気がしますね。
元々はクロスオーバーっぽく、あんま関係の無いキャラを混じらわせようって感じで書いてたんですけど…偏ってるなぁ。ここら辺は課題点かしら。
さて、ちょっとした設定周りの話をすると背景は「会長と」シリーズのを使ってます。時期は三年目。
んで、カイのEDイベントが二年目に起こったという超if設定を行ってるという暴挙。この時点で色々とついてけない人が多そう。
まぁ逆に優さんが全く関わってないので「2年目→3年目」のイベントと置き換えても特に問題は無いですけども!
今回書きたかった理由が「カイにエプロンドレスを着せたい」というモノでした。
そこで真っ先に思いついたのがつぐみちゃんの喫茶店で、そこで働く為の理由をどうするか・・・と考えた末がこのSSだよ!
このSS、勇くんがえらいスケベなキャラになってますけど、優さん相手だと大人しいだけで、実は同年代以下だとかなりヤンチャな子だったりします。
ときメモでこういう主人公の設定付はどうなんだろうな、とか思いつつも楽しかったりしました、このやりとりはw
やっぱ主人公の個性付けはやってて良いもんです。これで絵がかけたら言う事無いのにな!
そんなこんなでカイSSもかけたので・・・次は都子か!どうしたもんかな、一応ネタというか構想自体はあるけども・・・。
とりあえずは、次回!ならぬ次月へ!
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by Horyday | 2011-04-15 01:32 | 小説


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