東方の夜明け

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2011年 03月 02日

【ときメモ4】 Made in Cafe ~メイドさんといっしょ~ 【SS】

※このSSはフィクションです。
※登場する人物、地名、団体名(んなもの出ねえ)、シチュエーション、メイドさんは架空のものです。(俺だけの中で良い)
※つぐみちゃん誕生日記念SS

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―7月。
夏という季節に相応しい暑さが外の空気を染めている。
しかし、彼―新山 涼が今いる場所は外の暑さとは正反対に涼しい。
それは、喫茶店という冷房がしっかり聞いた空間に居るからであった。
彼が今座ってる席には、文系、理系といった様々な参考書や問題集が置かれてある。
近くにはノートも置いてあり、そこには問題集を解いているのか数式や答えが書かれていた。その近くに落書きが描いてるのは、単なる暇つぶしによるものだろう。
そして現在彼は、テーブルへ突っ伏した様に頭を抱えている状態であった。
「大丈夫ー?根詰めすぎてオーバーヒートしてない?」
そんな彼に声をかけるのは、メイド服に身を包んだ少女であった。
眼鏡をかけた少女の名前は語堂つぐみ。今涼が居る喫茶店「シー・ムーン」店長の娘であり、涼のクラスメイトでもある。
別にメイドカフェをやってる訳でもないのに、彼女がメイド服を着込んでいるのにはちょっとした理由があるのだが、それはまた別の話である。
つぐみは、持ってきた冷たいココアを涼の近くに置く。同時にカラン、と氷の動く音が室内を更に涼しく感じさせるかの如く彼の耳元へと入ってきた。
「大丈夫じゃなけりゃ、ここで頭抱えてねえよ…。」
抱えてた頭を、つぐみの方へ動かし疲れた視線で涼は言う。
余裕のある態度はそこには無く普段の涼を知っている人物から見れば、かなり追い詰められている事を察するであろう。
しかし、それを見てもつぐみは心配する事もなく、呆れた視線を涼へ投げかけた。
「それでも自業自得よ。テストの赤点取ったのはあんたの勉強不足の所為じゃない。」
「う、それは解ってるけどよう。」
「それに、今度の追試で満足な点数を取れなかったら夏休みの始め一週間は学校で補習って話じゃない。」
つまるところ、今彼が行っているのは後日行われる追試の勉強であった。
普段勉学に関しては疎かな部分が大きい涼であったが、今までは一夜漬け戦法により赤点ギリギリのラインでどうにかなっていた。
しかし今回は一夜漬け戦法が通用せず、5教科中2教科赤点を取るハメになってしまったのである。その2教科の内1つは涼が苦手とする数学なので、頭も抱えたくもなるものであった。
だが、彼にとって頭を抱えたくなるのはそれ以外にもあった。
「それだ。もし、追試も落ちてしまったら俺がつぐみちゃんと一緒に遊びにいく約束が、補習という味気ない1週間に潰されてしまう。それだけはナントカ水鳥拳最終奥義の如く断固阻止しなければならないとな。」
「なんかそれ、思いっきり補習行きな気がするわよ。」
「…まぁ、それは兎も角。アイスココアいただくよ。」
つぐみのツッコミを無視して涼は手元に置かれていたコップを手に取り、それを口へ付けた。
一緒に流れてくる氷が唇の上に当たって、少し冷たい。
しかし丁度喉が乾いていた涼はそれを気にする事もなく、コップに入っているココアをどんどん喉の奥へと流しこんでいった。
「ぷはぁーッ。ふぃー、いい感じに頭がスッキリした気がする。」
「ふふん、私が入れたんだから当然でしょ。」
「つぐみちゃんか…なるほど、ちょっと秀才気分になれたかも。」
そう言って、涼はかけても居ないのに、手を顔へと寄せて中指で鼻の頭辺りを押し上げる動作をした。
どうやら、メガネを掛けなおしているマネらしい。その動作の後、つぐみを見てやんちゃそうに笑った。
「もう、おだてても何も出ないからね。」
それを見て、つぐみも苦笑する。
体格が大きいくせに、何処か子供っぽい所がある涼を気づけば彼女は気に入っていた。
それに気づいたのは、少し前。高校生活が3年目に入ろうとした春の頃である。
初めて出会った時は、親友である星川真希に近づいてくる男の一人と思っていた。
しかし気づけば関わる事が多くなったのはつぐみとで、それを真希にからかわれる事もあった。
からかわれれば真希に対して反論もしたし、別にどうでも良いという思いはあった。けれど、気づけば今ではつぐみが涼の事を気にしない日はなくなっていた。
だから、涼が赤点をとって一緒に遊びに行ける約束を守れないかも、と知った時は彼女は内心、少しだけではあるが落ち込んでいた。
けれど、それを涼に対して表情(かお)に出すのは癪であったので。
「ま、仕方ないわよ。補習コースになってもまた次回があるって。」
赤点を取って軽く落ち込んでいた涼にそう言っておいたのである。
だが、それが逆に涼の性根に火をつけたのかここ数日は喫茶店に入り浸っては勉強に勤しんでいたのである。
突然のことではあったが、喫茶店のマスターであるつぐみの父親は涼がバイトで頑張っている事も知っていたので何も言わなかった。
つぐみも、「お客の邪魔はしないでよね~。」と言ってはいたが何だかんだで客数が少なくなると涼の方へと行っては何かと気にかける事が多かった。
そうして今に至るのだが、元々勉強が苦手だった涼がいきなり参考書に手をつけてもスラスラと解ける筈がなく、度々テーブルに体を任せては現実逃避とばかりに休んでいる時間が多い。
今も、つぐみのメガネをかける真似をして彼女に軽く頭を小突かれる所であった。
「それに、調子に乗らない。まったくもう…。」
そういうつぐみであったが、やはりその評定は怒ってるのではなく、どこか手のかかる弟を見てる姉の様な表情であった。
「へへ、つぐみちゃんはからかい甲斐があるからな。…ふぅ、一息ついたし続きをやるか。」
「今、どれをやってるの?」
勉強を再開する前にと体を伸ばし始めた涼に、つぐみが訊ねる。
「んー…んっ、今は文系かな。長い文章から適切な語句や一文を選ぶ問題とか…あんまし解らないんだよね、こういうの。」
「なっさけないわねー。…ふぅん、そうね。私がちょっと教えてあげようか?」
「え、良いの?仕事とかあるでしょ。」
「心配には及ばないわよ、今はもうピークも過ぎてお客さん殆どはけちゃったし、お父さんも暇だからこっちの仕事も少しはさせないとね。」
「そう言ってくれるのなら、じゃあお言葉に甘えるかな。」
「オッケー。じゃあ向こうに寄った寄った。」
つぐみは嬉しそうな顔で手に持っていたお盆をテーブルの隅に置き、涼を長椅子の奥へと追いやる。
そして、先程まで涼が座っていた所へと座った。
涼があちこちに広げていた文系の参考書の一つを手に取り、その中を読む。
「ふんふん…そこまで難しそうな問題じゃないわね。追試で出るのってここら辺であってる?」
「ああ、それ先生が教えてくれたヤツだから、そうだと思う。」
「じゃあ、まずはここからやってみますか。この文章から主人公の友人に対する心情を強く表している一文を探してみなよ。」
つぐみは参考書をテーブルに置き、だした問題の文へその細い指を当てる。
涼は真面目な顔でその文章を見て該当する一文がどれか、じっくりと探す。
途中、それらしい文章が見つかったのか視線が止まったと思えば、違うと判断したのかまた視線を巡らせる。
「ふふっ…。」
真剣にそうやっている涼を見て、つぐみは軽く吹いてしまった。
涼はいきなり吹き出したつぐみを見て、不思議そうに首を傾げる。
「な、なんだよ。」
「ごめんごめん、何かいつも余裕な態度を見せてるあんたとは違うから、ちょっとギャップを感じちゃってね。なんていうか…」
―かわいいね。
「なんていうか?」
「…な、なんでもないわよ!」
「???」
つぐみの反応に首を傾げる涼であったが、すぐに気にならなくなったのか参考書の方へと目を戻すのであった。
興味を持たれなかった事にほっと内心息を吐き、つぐみは頬杖をついて涼が問題を解いている様子を見る。
その顔は、まるで手のかかる弟を見守る姉の様に微笑んでいた。
「うーん。」
「どうしたの?」
数問解いた後、どこかの問題に詰まったらしい涼を見て、つぐみは身体を彼の方へと近づけさせる。
そこからノートと参考書の方へと身体を伸ばす。
それに合わせて、涼もつぐみが見やすいように身体を少しだけ奥の方へと動かした。
少しだけつぐみの肩が触れ、涼の心が揺れる。
今度は、涼がつぐみの事を見つめる番であった。
彼が店長であるマスターと二人で考案したとはいえ、メイド服姿の彼女をこんな間近で見るのは、そういえば初めての事だと今気づいた。
学校や喫茶店、そしてデート中で見せるしっかりした彼女にメイド服は良く似合うなと涼は改めて思う。
それでいて、ギャップを感じさせる小柄な彼女を見て、彼は軽く頬を掻いた。
―涼とつぐみは知り合って現在、2年半くらいとなっている。
初めは、つぐみの親友である星川真希を巡って、ちょっとしたイザコザがあったのではあるが、それが収まってからはお互いがお互いを良く絡む間柄となっていた。
涼がおイタをすれば、つぐみがすかさずツッコミを行い。涼がつぐみをからかえば、彼女は怒ったり、恥ずかしがったり、笑ったり。
傍から見れば”仲の良い友達”以上の関係と言われても仕方ない位であった。
実際、涼の親友である七河正志と小林学にはそれぞれ暖かいのと羨望の視線を貰ったりしていた。
「…ちょっと、聞いてる?」
言われて、涼はハッとしたように目を大きく瞬かせる。
気づくと、つぐみが不思議そうな表情で彼を見つめていた。彼が彼女を見つめている状態は変わってなかったので、今は互いの視線が交差するような状態になっている。
「もしかして、私の話聞いてなかったんじゃないでしょうね~。」
「…ゴメン、その通り。」
「何よ、素直ね。」
「だってさ、つぐみちゃんのメイド服…いざ近くで見るとホント可愛いなって。」
涼がそう言うと、つぐみは驚いた表情になり、続いて徐々に頬を赤く染め上げていった。
口は、餌をあげる前の魚の様にパクパクと動かしている。
「な、な、な…突然何言ってるのよ!」
思わず声あげ、立ち上がるつぐみに他の席に座っている客が不思議そうに視線を向かわせる。
しかし、当のつぐみは自分の行動よりも涼の言葉に動揺しているのか、それを気にする様子はなかった。
つぐみの行動に涼も驚いていたが、彼女のように慌てるわけでもなく変わらぬ表情で赤く染まったその顔を見つめ続けていた。
「あ、いや。思ったことを言っただけなんだけど。」
「そ、それでも…まさかあんたに言われると思わなかったから、驚いたじゃない…。」
「どういう事さ?」
「なんでもないわよ!もう知らない!」
プイッとそっぽを向くつぐみを見て、涼の表情に少しだけ残念そうな色が含まれた。
涼が座っている席から離れるつぐみ。このまま業務に戻るのだろうか。
そう思って彼が再び参考書とノートとのにらめっこを再開しようとした時であった。
「…ねえ。」
声をかけられ、下げようとしていた顔をあげると離れようとしていた筈のつぐみが傍まで戻ってきていた。
「どうしたの?」
彼が聞き返すと、つぐみは顔を下に向け目を泳がせる。
何かを言いたげに口を小さく動かすが、その声は当然聞こえづらかった。
けれど、涼はそれに口をはさむような事はせず、静かに待つ。
「あ、あの…さ。その…。」
ようやく聞こえる大きさになった彼女の声。けれど、言葉は詰まる。
けれど、涼は待つ。彼女の言葉を。
「も、もし。追試頑張ったら…これ着て…出かけても…良いかもね。」
「マジで!?」
涼が勢い良く立ち上がり、その衝撃で彼が座っていた椅子が動き、大きな音を出した。
それを聞いて、また他の客が二人の方へと視線を向ける。
「ちょ、声が大きい!それに、出かけると行ってもアレよ、買出しに付き合ってもらう時位だからね!」
「それは別に良いんだけど、さっきつぐみちゃんも似たように声大きく出してたじゃないか。」
「なっ、それは別にいいのよ!変に口答えすると、この約束は無かったことにするからね!」
「ええっ、それは流石に横暴だ!」
「だったら黙って勉強頑張ってれば良いのよ!まっ、一夜漬けで毎学期どうにかこなしているあんたじゃ追試でオール満点は無理でしょうけどねぇ。」
”追試でオール満点”
それを聞いて涼の顔に少しだけ動揺が走るが、すぐにその瞳は強い意志をもったかのように光る。
「…やってやろうじゃんか。」
「へえ、思ったより良い返事じゃん。満点取れるアテでもあるの?」
「無いよ。だから、やれるだけやるつもりさ。」
涼はそう言って、再び参考書とノートとのにらめっこを再開した。
その横顔と取り組み具合を見て、つぐみは彼が本気だという事を理解する。
暫くそれを眺めた後、彼女はふぅと息を出しながらそこを離れた。
向かうのはキッチン。そこには、作りおきのココアがプラスチックの入れ物にタップリと入れられて冷蔵庫の中で冷やされていた。
彼女はキッチンの中に入り、手慣れた手つきで新しいコップを取り出すとその中に氷を入れ、次にココアを注いだ。
トポトポ…とココアが入ると同時に氷の音が涼しげに鳴る。
ココアの量が丁度いい所まで注がれたのを見て、つぐみは入れ物をコップから離し冷蔵庫の中へと戻した。
(これでよし、と。)
次に持って帰ってきたお盆を布巾で拭いて、コップをそこに乗せる。
後はそれを涼の元へと持っていくだけであった。
(ま、コレくらいはサービスしてあげるわ。だから涼…頑張らないと、承知しないんだからね。)
お盆を水平に持ち、涼が座っているテーブルへと向かうのであった。

―追試まで後一週間程。

……………

果たして。
「あら、つぐみちゃん可愛い服着てるわねー。」
「おう、つぐみちゃん今日はまた良い格好してるじゃないか。」
「つぐみおねーちゃん、それかわいー!」

「…うう。」
「なんだよ、そこまで嬉しがる事ないじゃないか。」
買出しの帰り道。普段どおりである余裕の表情の涼と、その隣には顔を真赤にして項垂れているつぐみの二人が歩いていた。
時間はもう夕暮れ時で、太陽は地平線へ潜ろうかとしているところであった。
一週間前。
地獄とも言える猛勉強(涼談)の甲斐があってか、涼は見事に追試で満点を取る事が出来た。
それを聞いた時は、つぐみも一緒に喜んでいたのではあるが、それは涼の意味ありげな笑顔を見て直ぐに凍る事となる。
そう、彼女は約束通りメイド服姿で買出しに出かけていたのだ。
当然、普段から着てない服装なものだから多くの人に珍しがられ、注目される状態はつぐみにとってとても恥ずかしいものであった。
「嬉しがってないわよ!もう、十分恥ずかしかったんだから…。」
口を尖らせるつぐみに、涼は気を改めるかのように頬を指で軽く掻く。
「まぁ約束とはいえ、きっちり守らなくても良かったんだよ?そりゃあ、俺も嬉しかったけど、つぐみちゃんに悪い思いはさせたくないしね。」
「…別に、気を悪くなんてしてないわよ。そりゃ恥ずかしかったけど…。」
「あー…うん、まぁ皆可愛いって言ってくれたから良かったじゃない!俺も中々サマになってたと思うよ。」
どうしたものかと微苦笑しながら言い繕う涼に対し、つぐみは軽く睨む。
しかし、それは恥ずかしさが混じった上目遣いによるものだったので、涼からすればそれは可愛いという以外、何ものでもなかった。
自分の頬が熱くなるのを感じ、涼は思わず手をつぐみの頭の上に置いた。
「きゃっ。」
と小さく悲鳴があがるあ、彼は構わず頭を軽く撫でる。
「な、何よ急に!」
「なんでもないよ!」
胸の鼓動が止まらない涼は、止まらない顔の熱さを彼女に見られたくない為に、今度は走りだす。
「ちょっと待ちなさいよ!」
つぐみがそう呼び止めるが、彼は構わず走り続ける。
買出しの荷物は全て彼が持っているので、彼女は手ぶらである。だから、彼は止まらなかった。
喫茶店に帰ったらきっと何か言われるだろうが、今こんな表情を見られるよりかは遥かにマシだと彼は思ったのである。
―着く頃には収まっててくれよ。
家路を走る二人を、夕暮れの太陽が見守るように照らしていた。


おしまし。

あとがき
つぐみちゃん誕生日記念SS
今回はメイドつぐみちゃんを書きたいが為に書いたようなものでした。ビバメイドイベント。
けど服装的にはデフォルトの服装が好きだったりします。鎖骨萌え。
これは案外スラスラ書けた上にそれなりに量があったので嬉しかった…のかしら。出来ればもう少し短くスラッと終わらせるのがベストな気がするけども。
今回もちょいと日常的な展開で、けどちょっとドキドキなイベントもありました的な感じを目指しつつ。どんな感じでしょう。
次回はカイか…これも構想自体はあるんですけど、サブにつぐみちゃんとルイルイを出す予定であるので、ちゃんと書けるか不安。特にオチが。
まぁまずは書いてみるか…それしかない!
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by Horyday | 2011-03-02 00:50 | 小説


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