東方の夜明け

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2011年 01月 12日

ONE OH! ONE ~ワンワン物語~

※このSSはフィクションです。
※登場する人物、地名、団体名(んなもの出ねえ)、シチュエーションは架空のものです。(俺だけの中で良い)
※一稀誕生日記念
※犬ってかわいいよね。



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新年も明け、3学期の始業式も終わり、いつもの高校生活が再開したある日の放課後、彼は放課後の家路を歩いていた。
まだ冬なので陽が落ちるのが早い。5時前だというのに周囲はそれなりに暗くなっていた。
寒空の中、一人で帰るのはどうにも寂しいと思いつつ、寒風を受けた彼はポケットに手を突っ込み身体を軽く丸める。
―と。
「おーっす!」
背中、というよりも腰に軽い衝撃。それと、腰の左右から突き出された両腕。
そして、聞き覚えのある声に彼は振り替えもせずに、声の主の名前を呼ぶ。
「全く、いきなりだなイッチー。」
「およ、良くボクだってわかったねー。」
その言葉に、彼は”全く白々しい”と言いたげな感じで苦笑しながら、ため息を出す。
「こんなタックル挨拶なんてやりそうなの、イッチー以外に居ないっての。…それ!」
「うわわ!」
彼は、ポケットに入れた手を出し、素早く声の主の後ろへと回りこむ。
後はその小さい身体を抱えるだけの簡単な動作だった。
抱えたその人物は彼と同じ、きらめき高校の制服を着た女生徒であった。
体格は小柄で、少し長い髪を頭の後ろで簡単に纏めている。しかし、どこか中性的な顔つきが、彼女―前田 一稀をどこか男女の壁を感じさせない不思議なフレンドリーさを感じさせていた。
実際のところ活発的な性格でサッカー部に所属しているのと、サバサバした性格もその雰囲気に一役買っている。
友人よりも少し上の間柄…とは、二人は意識してないが、回りから言わせればそんな感じの彼と一稀は、時々こうやってじゃれ合う事が多い。
そして、それを学校でやる時は大体友人の学が悔しがるようにして見ているのも恒例になっていた。
「や、やめろよー!ちょっと恥ずかしいじゃん!」
イヤイヤ、と身体を少しだけ暴れさせる一稀に、彼は違和感を覚えた。
普段ならそこまで嫌がらない筈なのに、今日は何故か嫌がっている。
どこか虫の居所でも悪かったのだろうか。と考えるが、それならば先程のように抱き着いてくる事が無い。
「あ、ああ…悪い。」
良くは判らないが、一稀が嫌がっている以上は下ろすしか無かった。
下ろされた一稀は、少しだけ頬を膨らましながらも持ち上げた時に乱れた制服を直している。
どこかいつもと違う彼女の様子に、彼は少しドキマギとしながら指で頬を掻いた。
「そいや、何か用なのか?急に呼び止めたりして。」
だから、気分転換に話題を変えてみる。そしてそれは、彼が少し気になっていた質問でもあった。
一稀の衣装直しが終わり、一稀が彼の右隣に並ぶ形で二人は歩き始めていた。
「ん?別に、ただキミが居たから呼び止めただけだよ。」
「そ、そうか。」
そこで会話が途切れる。
いつもはこうでは無いのだが、この沈黙がどうにも重いと彼は感じた。
「あ、そういえばさ!」
今度は一稀が声をかけてくる番だった。取り敢えず、重苦しい雰囲気が解放されそうな事に彼は安堵の溜息を心の中で吐く。
「おっ、なんだなんだ?」
乗り出すよううに聞き返すと、一稀は「へへへ~」と嬉しそうにサッカー部で使っているショルダーバッグのジッパーを開き、中から何かを取り出した。
「これは……」
一稀が笑顔で出してきたのは、犬耳のアクセサリーがついたカチューシャであった。
薄暗くて判りづらいが、毛色はおそらくは茶色であろうか。触ってみると作り物だとわかる感じが、指を伝ってくる。
「うん!友達が誕生日プレゼントに一つくれたんだ、可愛いだろー。」
誕生日、と聞いて彼はふと思い出した。先週は一稀の誕生日で、その日は他の友人や彼を交えて彼女の誕生日パーティを行ったのであった。
その一環で一稀は来てくれた人全員―もちろん彼も―から「誰からのかは判らない様に」というサプライズ付きでプレゼントを貰っており、その数の多さから一稀は嬉しさの余り少し涙ぐんでもいた。
そして、そのプレゼントに彼は見覚えがあった。なぜなら、その犬耳カチューシャは彼が購入し、プレゼントしたものだったのだ。
「た、確かに。可愛いなぁ。」
少し戸惑った声色だったかもしれないが、彼はこのまま通すことにする。
幸い、一稀もそれには気づいてない様だったので一先ずは内心、ホッとため息をついた。
このカチューシャを選んだ理由としては、「一稀は犬っぽい愛らしさがある」という彼の考えだったので、まさかここまで喜ばれるとは思っても居るはずも無い。今でこそ彼女は気に入っている様ではあるが、理由を聞いたら一体どんな風に思うのか、彼はそれが少し怖かった。
「でしょ!へへ…他にもマフラーとか貰ったんだけど、こういう女の子らしいプレゼントはこれだけだったから、一番気に入ってるんだぁ。」
意外だな、と彼は思った。普段は女の子らしさに拘ってないと思っていた一稀だったが、どうやらそうでは無かったらしい、という事にである。
(そういえば…最近、一稀ってスカートを履く機会が多くなってる気がする。)
思い返すと、彼の頭の中には出会った頃の彼女の私服はラフな上着にズボンと言ったボーイッシュな格好が多かった記憶があった。
良く一緒に居る所為か、彼にとっては余り大きな変化に思えなかったのだろうか、よく考えると不思議な事だと、彼は内心首を傾げる。
「へえ…だったら、プレゼントしてくれた人も嬉しいだろうな。犬耳はちょっと余計かもしれないけど。」
苦笑しながら、まるで他の人からのプレゼントかの様に彼は言う。
しかし、一稀は彼が先程予想した事とは違った反応をした。
「余計じゃないよ。多分、ボクに似合うからこういうカチューシャにしてくれたんじゃないかな。」
「…そうかもな、イッチー、可愛いし。」
思わず出た言葉だったが、それを聞いて一稀が驚いた様に彼の方へと振り向く。
その顔は、薄暗くても判るくらいに紅くなっていた。
「か、か、可愛い…って、ハハッ。やだなぁ、いきなり言うから照れるじゃんか!」
それはまるで、今の反応を誤魔化すみたいに一稀は笑いながら彼の背中をバンバンと張り手で叩いた。
思ったより攻撃力のあったそれを背中に受けて、彼は少しだけ顔を歪める。
「痛い痛い!別に冗談でも無いんだから、照れるなよっ!痛てて…。」
「て、照れてなんか無いよ!」
ふっ、と彼女の張り手が止まる。それと同時に、彼女の歩みも止まっていた。
少しだけ前に出た彼は、振り向き様に彼女の方を見る。
見ると、彼女は何かを言いたげに、彼と地面の方を交互に視線を動かしていた。
「…みに、…たから…。」
小さく聞こえたその声は、彼には全部聞こえなかった。
一体何が言いたかったのか、それが解らず彼は一稀に聴き直そうとする。
しかし、一稀の行動がそれを許してくれなかった。彼女は唐突に手に持っていたままだったカチューシャを頭に着けたのである。
見事にカチューシャが髪に隠れたお陰で、まるで本当に一稀から耳が生えたかのように見える。
(………これは…思ったよりも…。)
それを見て、彼は小さく唸った。
「犬っぽい」という印象で買ったカチューシャが思ったよりも似合っていたのだ。
まるで、今にも動きそうなその犬耳を、彼は思わず撫でる。
「ゃん!」
「うぇ!?」
撫でた瞬間、妙な―というか可愛い悲鳴を聞いて彼は思わず飛び退いた。
悲鳴の正体は、一稀であるのは解ったのだが、何故そんな悲鳴をあげたのは分からない。
「イッチー…?」
「い、一体なにするんだよ、急に!凄く擽ったかったじゃん!」
当の本人は頭を抑えながら、少し膨れている。
―擽ったい?
彼は軽く混乱した。確か、あの犬耳はただのアクセサリーの筈である。
それを彼が先程触った時、一稀は可愛い悲鳴をあげた。
「な、なあ…イッチー。もう一回、その、触っていい?」
気になった彼は、おそるおそる彼女にもう一回、犬耳に触れても良いかと聞いてみる。
一稀も、先程の”くすぐった”さが気になっているのか、もう一回触らせようかどうしようか、考えているようだった。
「…なんで?」
その結果出てきた彼女の言葉がこれで、彼はどう答えたものかと少し考える。
下手に言い訳じみた答えを返して、更に不審に思わせてはダメだろう。ならばストレートに答えるのが一番だろうか。
彼女の性格と、自分との仲を信じてみる。
「その、イッチーが、可愛かったから。」
(これで良いのか俺は!?)
言ってから自分の言葉に疑問を抱くものの、言った以上は貫くしか無い。
幸い、一稀にはかなり効いている様で、先程から赤い顔をさらに赤く染め上げる。
「あ、う…。う、うーん…じゃあ、別に良い、けど。」
躊躇するかの様に言葉を切りながら、彼女は頷き、その状態のまま彼の方へと近づいてきた。
恥ずかしいのだろうか、顔は見せない。けれど、彼には我慢するように目を瞑っている一稀の顔が見えている気がした。
そんな彼女の頭に、おそるおそる左手を近づける。
先程の事があったので、今度はまず頭の方に手を乗せた。
「あっ。」
今度は驚いていない。一稀の声は心地良さそうな、安堵したと判るものであった。
彼は、そこから優しく撫で、今度は耳の方へと手をやる。
「んっ…!」
耳の裏側に指を這わせると、一稀は身体をビクンと動かし、先程よりかは落ち着いた声を出す。
その声が色っぽくて、彼の心は少しだけ奇妙な感覚に包まれた。
―なんていうか、ちょっといじめたい。
その奇妙な感覚の正体が解った時、彼は小さく首を振り、誤魔化すように一稀の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「うわわ!何するんだよ!」
当然、一稀はそれに驚く。それでも彼は止めず、ひとしきりに激しく撫でた後、勢い良く手を離した。
その勢いで、そっぽを向く。
「ちえっ、そんなの卑怯だよ…。」
そう呟くと、彼は一人で先を歩き始めた。カチューシャを外した一稀は少し乱れた髪を直しつつ、走って追いかける。
「ちょ、ちょっと待ってよー!髪をこんなにして酷いじゃんか!」
「お、俺だって好きでしたんじゃないよ!」
彼も釣られて走りだす。彼女に今の顔を見られたくないから。
今の彼の顔は、照れたお陰で赤くなっており、そしてだらしなく緩んで居た。
(こんな顔、一稀に見せるわけには行かないよ!)
だから今はこの顔が直るまで、彼は兎に角走ることにした。
しかし一稀とは違い、運動部に所属していない彼はその差を徐々に詰められる。けれど、それでも別に良いと思っていた。
ほんの少しでも時間が稼げればいい、そんな事を思いながら、彼は一稀と共に夕暮れの家路を駆け抜けるのであった。



おわり。


あとがき
一稀誕生日用SS。そしてかなりの突貫作業なんで、ハンパといえばハンパ。
コンセプトとしては、下校イベント的なノリで誕生日に関連した話を書こうかと思い、こんな形に。一稀は犬っぽいイメージですね、とある方も絵で書いてくれましたが、尚更思う。
そんな一稀はお手をした後に頭をナデナデしてあげたいですのう。可愛いんだろうなー、ちょっと試してみたいけど、そんな事をしたら黄金の左足が飛んできそうなんで言いませぬ。


ちなみに主人公君が買ったカチューシャは440で売られていた曰くつきの物という設定でした。
セリフと心の声で一稀に対する呼び方が違うのは仕様で、表には出せないけど、心の中では呼び捨てにしてるぞ!という彼なりの背伸びみたいな表現です。
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by Horyday | 2011-01-12 00:47 | 小説


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