2010年 12月 25日
※このSSはフィクションです。 ※登場する人物、地名、団体名(んなもの出ねえ)、クリスマスは架空のものです。 ※突発だからヤマなしオチなしイミなしだよ!ていうかミニスカサンタつぐみちゃんを書きたかっただけだよ! 冬も中頃を過ぎ、クリスマスを迎えた今日のきらめき市の空は、先日からねずみ色に覆われていた。 そしてその雲は今、ロマンティックにも小さな雪をゆっくりと降らし、クリスマスのムードを高まらせている。 時間は午後の6時。冬なので街灯が光るのも早く、それが雪に反射して尚更幻想的な雰囲気を出していた。 「綺麗…。」 そう呟いたのは、窓から外を見ていた眼鏡をかけた少女―語堂つぐみである。 今彼女が居るのは、彼女の実家でもある喫茶店「シー・ムーン」であった。 その中は普段の時間帯に比べて少しだけ騒がしい。 「飾り付けはこれでいい?」 「あ、真希ちゃんそこ高いから俺がやるよ。」 「ねえ、星川さん。ツリーの飾り付けはこれでいいかしら?」 「な、なあ優。こ、こういうのも飾ってみたらどうだ…?カワイイと思うんだけど…。」 「あら、それも良いわね。じゃあこことかどうかしら…。」 「あ、あたしは何処でも良いと思う!」 いや、少しという所ではなかった。騒がしいと言える今の状況を説明すると、話は少しばかり遡ることになる。 それは、ある日の放課後の事である。真希とつぐみ、そしてその二人に挟まれる様に涼の三人が下校をしていた時に、ふと真希が口に出した一言が始まりであった。 「そういえば、もうすぐクリスマスだよね。近くなってくると一年がもう終わるんだなーって実感しちゃうなぁ。」 「なに言ってるのよ、真希。私たち学生は3月まで学生なんだから、そんな年寄りくさい事言わないの。」 「な、何よそれ!私の何処がおばーちゃんなのよ!」 真希が文句を出して、つぐみが笑いながら逃げる。そしてきゃいきゃいと涼の間を追いかけっこするその光景は涼にとっては、最早見慣れたものになっていた。 「まったく、相変わらずだな二人とも。」 そうやって苦笑する涼の姿も三人になってから追加された風景であり、最後には真希がつぐみを捕まえ、二人が笑い合って終わる。親友同士であるからこそ、良くあるじゃれ合いであった。 「でも…あと3ヶ月なんだよね、高校生活も。」 ひとしきり笑った後、真希は寂しそうに呟いた。その顔は本当に寂しそうで、同じように笑い合っていたつぐみと苦笑していた涼は、その時の彼女には何も言わなかった。 暫く、沈黙が続く。 「…バカね。」 だが、それを打ち破ったのは―やはりと言うべきか―つぐみであった。 「高校生活は終わりだけど、私達の関係は終わる訳じゃないのよ?そりゃあ、確かに高校に入って楽しかった事は…一杯あったけどね。」 そう言う彼女の視線は、涼の方に向けられている。その瞳にどんな意味が込められているのか、それを真希は知っていた。 「うん…けど、やっぱり思わず、ね。しんみりしちゃうなって。」 だから、真希は自分の気持ちを殺す。親友にそれを悟られてはいけないから。 だから、気を取り直すように心の中で彼女は自分の頬を思いっきり叩く。 「そうだ!もうすぐクリスマスだし、高校生活最後の記念もかねてクリスマスパーティーしない?」 「パーティ?」 「お、面白そうだねそれ。」 思わず飛び出た真希の提案に首を傾げるつぐみと、興味を示す涼が対照的であった。 「だよね、だよね!あっ、けど場所はどうしようかな…出来れば広いとこでしてみたいけど。」 「じゃあつぐみちゃん家でどうかな、喫茶店貸切にしてもらうとか。」 「ちょ、ちょっと!何勝手に話進めてるのよ!」 二人で話しを進めている中で、突如自分の家を持ち出されて、つぐみは思わず声を上げた。 「うーん、けど他に良さそうなトコが思いつかないし…ダメかな、つぐみちゃん。」 「ご、ごめんねつぐみ…。」 「べ、別にダメって訳じゃないけど…そういう事なら、まずは私に話を通しなさいって事よ。」 お願いするように言ってくる涼に、謝ってくる真希。 先程とは立場が違う、対照的な二人につぐみは小さく溜息をつくのであった。 「取り敢えず、お父さんに言ってみるわね。」 とは言ったものの、つぐみの父である陽太は聞いてすぐに二つ返事でオーケーを出し、今に至る。 その間に準備やら他に人を呼ぶやらで気づけば涼達にとっては先輩で、真希にとっては先代の生徒会長である皐月優。そしてその友人である龍光寺カイと言ったメンツが揃っていた。 優は涼達にとっては馴染みが深かったので良いのだが、カイに関しては殆ど初対面であったのと、彼女の悪評、そして機嫌が悪そうな表情が手伝って当初は少しだけドギマギとした雰囲気が流れていた。 だが、それもすぐに崩れる事になる。その空気の間に、一匹の犬が割り込んできたからだ。 つぐみの両親の知り合いから預けられていたカシオという柴犬は、カイの前に立ち止まった後、彼女の顔を見つめ始めたのである。 突然のことに少しだけ戸惑いの色を見せたカイは、カシオの方へと目をやった。 見つめ合う一人と一匹の間に何があったかはわからない。カシオと少しだけ見つめ合ってからカイは機嫌の悪そうな表情を柔らかくし、優しくカシオの頭を撫でた。 そこで、優以外の4人が抱いていた龍光寺カイという少女の印象は変わったのであった。 「なにしてるんだい、つぐみちゃん。」 窓の外を眺めていたつぐみの後ろから、突然の声。 男性の声で、彼女のことを「つぐみちゃん」と呼ぶのはここでは一人しか居ない。 尤も、そうしなくても窓のガラスから後ろにいる人物の―涼の姿は判っていたのだが。 「なあに、まだ飾り付け終わってないんじゃないの?」 だから、つぐみは振り向かずに応える。 「そうだけど、一人だけ休んでるのは感心しないなぁ。」 そういう彼の言葉はどこかわざとらしい。その理由も、彼女には大方見当が付いている。 「嘘おっしゃい。どーせアンタ、私がこの格好で動くのを見たいだけでしょ…。」 そう溜息をついて、つぐみはガラスに映った自分の格好を見る。 首周りは大きめのケープを着てはいるが、赤と白で構成されたその服のスカートの丈は短く、両脚は太ももから大きく露出をしている。 いわゆる、ミニスカサンタという格好をつぐみはしていたのだ。 ちなみに、これは陽太の発案で服自体はそれを聞いた涼が制作したもので、いつぞやのメイド喫茶と似たような展開に最初つぐみは猛抗議をしたのだが、最終的に二人の懇願に負ける形となってしまった。 「良いじゃない、俺が作っただけに良く似合ってる。」 「自画自賛どうも。…ま、確かに思ったよりも着心地は悪くないかな。寒いし、短いけど。」 そう言って、つぐみは自分の体を抱く。流石に多少は厚手の生地を使ってるとはいえ、ミニスカート状になっているそれは冷たい空気を彼女の素肌へと存分に浴びせるには十分だった。 「折角のパーティーなんだし、悪いけど今回は少し我慢してくれよな。」 「わかってるわよ。けど今回きりだからね、ミニスカなんてあんまし似合わないし。」 「うーん、そうかな。」 小さく首を傾げる涼に対し、つぐみは軽く肩をすくめ、笑う。 勿論それは単純な笑顔ではなく、少し自嘲気味なものであった。 「そうそう、普段からこんなのは履かないからね。…なによ、その勿体無さそうな顔は。」 「実際勿体ないと思うんだけどな、むしろ普段から見てなかっただけに、新鮮な魅力があるというか。」 涼のその言葉に、つぐみは先程までの自嘲気味な笑みを止める。 そして少しだけ口をパクパクと動かした後、彼女は小さく顔を伏せて何かを呟いた。 「だったら、別にあんたと二人っきりの時くらいは…。」 「ん、何か言った?」 「別に。ただ、こういうのも悪くないかなって思ってきただけよ。」 ぷい、とそっぽを向いたつぐみの頬は赤い。 それに気づいた涼は、どことなく彼女の言葉を理解し、苦笑しながら「そっか」とだけ応えるのだった。 ふと皆の方を見ると、パーティーの準備はほぼ終わりかけている所であった。 「お、準備はもう終わりそうだ、そろそろ行こうか。」 そう言って、涼は自然な動作で手をつぐみへと差し出す。 最近では良く見慣れた事であったのだが、何故かこの時のつぐみは呆気に取られてしまった。 思わず手を出そうとして引っ込めようとするが、少しした後にゆっくりとその手を握った。 握り慣れたその手は相変わらず”彼”であった。初めて握られた時に感じた安心感とも、信頼感とも言える奇妙な感覚に、つぐみの顔は自然に綻ぶ。 それと同時に、先日の真希の台詞が彼女の頭の中で蘇る。 (…あと3ヶ月、か。) 複雑な思いが彼女の中を駆け巡り、つぐみは思わず彼の手を強く握る。 小さい力で握り返したそれが合図となったのか、彼は彼女の手を引き、二人は一緒に皆のもとへと向かうのだった。 「という事で最後の飾り付けは、ここを貸してくれた語堂さんにやってもらうわね。」 二人がやってきた直後に優から言われた、というよりも受け取ったのは星型の装飾品であった。 その大きさはつぐみだと両手で持つほどで、少し大きい。どうやら、中に設置されたモミの木の頂点にそれを付けるようであった。 そのそばには、分かりやすい事に脚立が置いてある。つまりはあれに登って付ければ良いのだろう。 つぐみは受け取ったそれを見ながら、他の人へと視線を向ける。 真希はつぐみへ期待の視線を向け、優は大人の笑顔を向けている。カイはどちらかというとカシオの方が気になっているようで、先程から頭を撫でていた。 そして、父親の陽太は「やってあげなさい」と言葉には出さなかったが、そんな視線で娘を見る。 最後に、つぐみは涼の方へと顔を向けた。 「やりなよ。」 彼の返事は簡単なもので、けれど彼女の背中を押すのには十分なものであった。 つぐみは脚立へと足をかけ、少しずつ上へと登る。 とはいえモミの木はそこまで高くはない、だからすぐに頂上へ手が届く位置へとたどり着いた。 彼女は、そっと手に持った星型の装飾品をモミの木の頂点へと取り付けた。 「完成ー!メリークリスマース!」 それと同時に、真希が大きな声で祝福の言葉をあげた。 「メリークリスマス。」 それに続いて優が拍手をする。カイ、涼、陽太も釣られて拍手を行った。 その後、陽太はキッチン近くへと向かい、喫茶店に設置されているラジカセのスイッチを入れる。 すぐに店内にクリスマスソングが流れだし、さらにムードを高めた。 「お疲れ様。」 涼は脚立の上で座ったままのつぐみに声をかける。彼女は、一気に雰囲気が変わった喫茶店内に圧倒されているのか、呆然としたような表情になっていた。 「あ。あ、うん。ありがとう。」 「なんか、心ここにあらずって感じだね。」 「うん…なんでだろうね、別に大した事じゃないのに。」 「んじゃあ、そんなつぐみちゃんの目を覚まさせる魔法の呪文を言ってあげようか。」 「?…何よ、それ。」 「俺は下、つぐみちゃんは上。」 涼の言葉に、つぐみは不思議そうな顔をしながら彼の方へと頭を向ける。 涼も彼女の方へと頭を向けているが、その顔はどこか満足そうであった。 「なんていうか、清純な白ってやつはいいもんだな。」 「!!!」 そこまで涼が言って、つぐみは合点が言ったのか顔を真ッ赤にしてサンタ衣装のスカート部分を両手で抑えた。 「あ、あ、アンタ…!」 「いやぁ、まさかこういうとこでラッキーが起こるとは思わなかったな。良いクリスマスプレゼントでし…ん?」 からからと笑う涼であったが、ふと目をやると脚立の上に居たはずのつぐみが居ないことに気づく。 視線を動かすと、いつの間にか彼女は涼の目の前へと着ていた。 その顔は、笑顔であったのだが涼は本能でそれは友好的なものでは無いと感じていた。 「私からのクリスマスプレゼントはそれではなくってね。」 つぐみが手を平にし、腕を上げる。顔は変わらず笑顔であった。 良い所まで来たのか、上げている腕を止めると、その顔は一気に豹変した。 「本命は、これよ!」 そして同時にその腕が涼の元へと向かう。 (まぁわかっているオチではあったが、ありがとうございます。) 雪降る聖夜に、景気のいい音が気持ちよく響くのであった。 あとがき 突発なんでかなり中途半端というかアレやコレやソレやです。 つぐみちゃんのサンタ服が脳内にひらめいたんですけど、それを形にして珍しくラブラブさせようと思ったらなんかギャグなオチになったという。どういうことなの。 一応設定上は在学中だし、やっぱり”その先”をやるってのは俺の中ではご法度なのかもしれぬ。 という事でもう一編、サンタつぐみちゃんで何か書きたいと思うけど、こっちはもっと短くなりそうな予感。 というか優さんのSSも早く続き書きたいなー。考えてるのだと合宿編とかあったりするのだけど・・・一体いつ陽の目を見る。
by Horyday
| 2010-12-25 02:53
| 小説
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