2010年 10月 25日
※このSSはフィクションです。 ※登場する人物、地名、団体名(んなもの出ねえ)、後日談は架空のものです。 ※人から学ぶ他キャラの良さ 「ボクはキミが好きだよ。」 彼女、前田一稀のその告白で二人の高校生活は幕を閉じた。 しかし、それは結ばれた二人にとって新たな始まりでもある。そして、その絆を表すかのように、二人の手は強く繋がっていた。 二人は今、伝説の樹と呼ばれる場所から校門を出るためにグラウンドへと向かう途中であった。卒業式も結構前に終わり、生徒の殆どは帰宅しているのか、きらめき高校はいつもの騒がしさは無く別の場所を思わすかのように静かで、人の姿も見えない。 まるで、そこに二人しか居ない様な、不思議な雰囲気が二人を包む。 先程の告白で感極まり泣いていた一稀の顔は、今では笑顔である。 いや、笑顔以上…というよりもドコかソワソワしていると言える、そんな表情だった。 彼はそれが気になっており、思わず声をかける。 「なあ、一稀。」 「ん、なーに?」 彼の方へ顔を向ける一稀。真正面から見るその表情は、今まで見せた表情よりも一番輝いてるように見える。 「いや、何か一稀、落ち着いてないなぁって。」 告白とはまた違った胸の高鳴りを感じながら、彼は言葉を続けた。 それを聞いて、一稀はあっ、と恥ずかしそうに頬を指で掻く。 「…もしかして、喜んでるのをガマンしてるの、バレバレだった?」 「バレバレっていうか、隠してたのか…。」 どうやら、先程の落ち着かない笑顔は嬉しさを我慢していたらしい。それを理解した彼は、一稀の解りやすさに呆れつつも笑う。 「えっへへ…だってさ、すっごく緊張してたんだもん。こうやって気持ちが届いて、キミと…その、恋人…になれて、うん、嬉しくない方がおかしいじゃん。」 ”恋人”の所から顔を真っ赤にする一稀。 彼も改めて自分たちの関係を言われると、それ意識してしまい釣られて顔を赤くした。 「そ、そう…だな。はは。」 だから、彼は少しだけ一稀から視線を外してしまう。今のままだと、きっと自分の顔も一稀と同じように我慢できなくだろうから。 そして、それは一稀の新たな暴走に気づかない事となってしまったのだが。 彼が目を離した直後、一稀は身体を少しだけ震わせ両手を思い切り振り上げた。 「…ッうわあああああああああ!!!」 突然の大声に、彼も直ぐ様一稀の方へ顔を戻す。 しかし、その瞬間に一稀はもうグラウンドへと全速力で駆けていく所だった。 「一稀!?」 彼も思わず追いかける。しかし、どちらかというと勉強の方に力を注いでいた彼では一稀に追いつくのは難しい。 どんどん彼と距離を離していく一稀は、グラウンドの中央へと向かっていった。 腕を一生懸命に振り、駆ける、駆ける、駆ける。その顔は下を向いている。 けれど、後ろから一稀の背中を見ている彼は、今の彼女の表情が一体どういうものなのか簡単に想像できた。 その彼女がグラウンドの中央へついた辺り、顔を思いっきり上げる。 背中側に居る彼には見えては居なかったが、その表情は彼の予想通り満面の笑顔で。 「ボクは!キミが!大好きだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」 両腕を上げて、そう叫ぶのだった。 その声はグラウンドから校舎へ、そして学校外…もしかしたら、きらめき市全体へ響いていったかもしれない。彼がそんな風に思ってしまうほど大きかった。 「い、一稀っ!」 突然のことに、彼は先程とは別の意味で顔を赤くする。 いくら時間が経っているとはいえ、学校にはまだ人は残っている。だから、一稀の大胆な告白(二回目)は聞こえていただろう。 さっきの声で驚いて、グラウンドへ飛び出してくるかもしれない。 彼はそんな事を一瞬心配したが、それよりも優先したいのは一稀が先であった。 一稀は叫んだ後にグラウンドの中央辺りで立ち止まり、空を見上げている。なので、もう少し進めば彼も彼女の元へと追いつけれる状態であった。 ―もう少し。 と思ったところで彼の身体がバランスを崩す。そんなに体力がない上に急に走ったので疲れが脚に来ていたのだ。 彼にも突然の事だったので上手く体を支えることが出来ないまま、グラウンドへと倒れこんでしまう。 「痛っ!」 「あっ。」 彼が倒れこんだ事で、空を見上げていた一稀がようやく頭を下へと戻す。 盛大に転んだ彼を見て、慌てて駆け寄る。 「だ、大丈夫!?」 「つつ…ったく、いきなり走るから、なんだと思ったよ。」 転んだ際に身体のあちこちを擦ったらしい、痛む場所を手で押さえながら彼は立ち上がる。幸いかは分からないが、制服はグラウンドの土で汚れてはいたが、破けていたりはしていなかった。 「ご、ゴメン。その、何か、急に怖くなっちゃって。」 「怖く?」 うん、と一稀はもう一度空を見上げて、言葉を続ける。 「さっき、キミに告白したことが夢だったんじゃないか、って。…ははっ、おかしいよね。あの時、抱きついたキミはホンモノだったのに。」 ―そうか。 彼は理解した。先程の行動が、一稀なりの強がりだったことに。 今まで女の子らしい振る舞いが出来なかった自分に、やはり自信が持てないのかもしれない。 だが、彼にとってはそんな事は些細な問題でしかない。だから答えはただ一つだけであった。 「…そんな事か。」 そう言って彼はふぅ、と息を吐く。あっさりとしたその反応に、一稀は流石に少しだけ表情が険しくなった。 「な、なんだよ!ボクだって本当は気にしなくても良いって解ってるんだ。けど…!」 「だったらさ。」 彼が一稀へと近づく。 何の予備動作もなかったので、一稀はそれに対応することが出来なかった。ので、彼女の身体は彼の身体へと、また包まれる。 「何回も解らせてあげるよ。これで文句ないよな?」 彼は自分の胸の辺りにある一稀の頭を優しく撫でる。撫でられた当の本人は、先程から何が起こってるのか解らないと言いたげな表情で彼の顔を見ていた。 「何も言ってくれないんじゃ、俺も反応に困るんだけどな…はは。」 彼がそこまで言って、ようやく一稀は口をパクパクと動かし始め、顔をまた真っ赤に染めていった。 「う、あ…あ…な、何してるのさ!」 「何って、えーと、抱っこ?」 「そ、それは解ってるよ!だから、その、そーじゃなくって!」 一稀は目をあちこちに泳がせながら、体をモジモジと弱いながらも抵抗するように動かす。 どうやら、今の状態をどうしようかと慌てながら考えているようだった。 暫くして、その抵抗も更に弱くなっていき、最終的には動かなくなった。顔は未だに赤い。けれど、表情には多少なり余裕が戻ったようであった。 「…そういえばボクがキミに抱きつくことはあっても、キミがボクに抱きついてくれたのは、初めてだっけ。」 「そういえば、そうだな。一稀リスペクトってやつだよ。」 「なんだよ、それ…あははっ。」 真っ赤な顔で、一稀が笑う。 (泣いたり笑ったり怒ったり、忙しいやつだなホント。けど…それが一稀だよな。) そう思いながら彼はもう一度、一稀の頭を優しく撫でた。 それが擽ったいのか、一稀は気持よさそうに目を瞑る。 その表情と、気持よさから出したらしい「んっ」という言葉に、彼は少しだけドキリとした。 (う、まるで…キスしようとしてるみたい。) そう、今の状態はまるでキスしようとしてる”それ”の様に見えたのだ。 普段はボーイッシュな雰囲気である一稀だが、先程の告白といい、こういう場面は女の子としての魅力が十分に溢れていると、彼は思った。 更にもう一度、彼は一稀の頭を撫でる。一稀はそれに合わせるように、また「んっ」と気持よさそうな声を出した。 そして、目はまだ瞑っている。 「…。」 彼は、一稀の頭に乗せていた右手を思わず顎へと持ってくる。親指と人差し指を使い、彼女の頭を少しだけ植えに向けさせた。 「ん!」 いきなりの事に彼女も驚いた声を上げたが、それでも目は開かなかった。まるで、その後に何が起こるのか悟っているかのように。 今、彼女の口は少しだけ開いている。その口と、健康的な薄い桃色をした唇が彼の頭を動かした。 少しずつ、少しずつ彼の頭が一稀の頭へと近づく途中、彼は頭を少しだけ傾けさせる。 彼の吐息が明確に感じるようになった距離の所で、一稀は少しだけ体を震わせた。 けれどそれは一回だけで、後は先程と変わらない。彼女は静かに事の終わりを待っている。 あと少し。 もう少し。 そろそろ。 ほら、唇が、 「くぉらぁぁぁぁぁぁぁぁ!なぁにグラウンドのど真ん中でメモリあってやがる!」 突然の叫び声に、二人して発信源へと顔を振り向いた。 そこには赤いシャツを身をまとった筋肉質の男性―二人の元担任である古我先生が走ってきている所だった。 「やべえ!」 「やばっ!」 それを確認した二人は急いで校門へと駆けていく。 「てめーら!卒業したからって俺がそういうのを見逃すと思うなよぉぉぉ!ここに居る間はずっと俺の生徒なんだからなぁ!」 「「ごめんなさーい!!」」 急いで逃げていくものの、二人の顔は笑顔だった。そして、真っ赤に染まっている。 一稀は、走りながら自身の唇を指で触れる。 二、三回ほど摩った後、満足したように小さく頷き、改めて校門へと足を踏みしめて行くのであった。 彼女、前田一稀のその告白で二人の高校生活は幕を閉じた。 しかし、それは結ばれた二人にとって新たな始まりでもあった。 抜けた校門の先を二人がどう歩んでいくかは、二人しか解らない。 おしまい。 ひょんな事で思いついたシチュを書いてみたシリーズ、一稀編。 適当に彼女を選んだ訳でなく、中を見てくれればわかりますけど、こういった事は一稀しか出来ないと思います。ふみちゃんとはまた違った感じの全校に向けた告白ですねw 個人的にこういった大胆な事が好きですので、脳内で絵を描いてると非常に可愛い一稀が描かれております。かわかわ。 ちなみにキスのシーンはオマケ程度、というか文字稼ぎみたいなものです。シーンの雰囲気自体はとある人の絵に触発されました。キャラは違うけど。 さてさて、続きを書かないといけない元々のSSよりこっちを優先して良いんかと思ってしまうが、思いついた以上はどうしようもねえ、って事でw しかし、この二人はノリノリである(顔を真っ赤にしやすいという意味で)
by Horyday
| 2010-10-25 02:13
| 小説
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