東方の夜明け

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2010年 09月 18日

【ときメモ4 SS】 And spring breeze ~ 春の君 ~

※このSSはフィクションです。
※登場する人物、地名、団体名(んなもの出ねえ)、シチュエーションは架空のものです。(俺だけの中で良い)
※ネタバレ:エリサは俺の嫁
※結論:エリサは俺の嫁


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「―ありがとう」

桜の花が開き始めた3月の中旬。
きらめき市のとある道を歩く、二人の姿があった。
一人はブレザーに身を包んだ、どこにでも居そうな風貌の男子学生。
その隣に居るもう一人は、薄い山吹色の着物を着た女性。
背は、隣にいる男子学生よりも少し小さめではあったが、一般的な女性よりは少し高めに見える。
傍から見れば、誰もが”長身が似合う”とそう思ってしまう、そんな雰囲気を持った女性だった。
それは、彼女の金髪碧眼といった容姿も手伝うのかもしれないが。
―エリサ・D(ドリトル)・鳴瀬。
本来は外国の出身であった父と母を親にもつが、彼女が生まれる前に両親が日本へ移住したという出来事がある。
つまり、容姿は日本人のそれではないが、戸籍上、彼女は日本人という事になるのだ。
元々は宮城の方に住んでいたのだが、2010年の春に父親の都合できらめき市へと引越し、きらめき高校へと転校する形で2年生へとなったのだった。

今は、その2年を過ごした、きらめき高校で卒業式を行った後の事である。
更に言うとその直前にエリサは、きらめき高校で出会った男子生徒―隣にいる彼―に告白を行ったのだ。
―きらめき高校にある、伝説の樹と呼ばれる樹の下で、卒業式の日に女の子から告白されると、その二人は永遠に幸せになれる―
そう、その伝説がある樹の下で。

「な・・・なぁ」
かくして、二人は結ばれた。
「ん?」
彼が、入学したときに隣に居たクラスメイトである星川真希に教えてもらった伝説。
それが本当かどうかだったかは、わからない。
「ちょ、ちょっと、今から寄りたい所があんのや」
ただ、彼女が今着ている、薄い山吹色をした着物を着る勇気。
日本人だけど、日本人ではない自分へのコンプレックス。
「うん、俺は良いけど」
そして、どうしても進めなかったその先。
その背中を押してくれる、いや、足を進ませる力の一つになったのかもしれない。
「いがっだ…。じゃあ、こっちに行くべ」
だから、今の二人があるのだろう。
だから、二人の絆を示すかの様にお互いの手が繋がっているのだろう。
(そういや、何処へ行くんだろ?)
(まぁ、なんだか楽しそうな顔をしてるし、着いてからのお楽しみにしてみるか!)

「で、行きたかったのって喫茶店?」
「んだ!」
ふんふん、と力強く頷くエリサ。
意気揚々と彼女が連れてきたのは、中央公園近くにある喫茶店であった。
在学中は良くデートの帰りなどで寄った程、馴染みのある店である。
その中の入口に近い窓際の席に、二人は向い合って座っていた。
時間的には昼を迎える前のお陰か客数は少ない。とはいえ、それだけにエリサの着物姿が一際目立つのだが。
まぁ、それは人が多くても少なくても変わらないだろうな、と彼は思った。
―しかし。
ここでエリサは一体何がしたいのか、彼には見当が思いつかない。
「一体どこに行くんだろうって思ってたけど、もしかしてお腹でも空いた?」
「そ、そういう訳でなぐって。ちょびっと頼みたいものがあんのや」
と、メニューを見ながらエリサが言う。
表情はメニューの下に隠れて、伺えない。だが、声を聞くにどこか恥ずかしそうな感じに思える。
到着する前までの意気込みは何処へ行ったのか。
メニューを開いてから、エリサはすっかりこの調子になってしまっていた。
「あの、ご注文は」
「へっ、えっ…あっ。えと、その…これを…」
だから、何気に近づいていた店員さん―バイトだろうか、若い子だった―にも気付かなかった。
おずおずとエリサが注文を頼むと、店員さんはわかりましたと彼女が今頼んだ品名を復唱した後、キッチンの方へと戻っていった。
(”ダブルハートドリンク”・・・って聞こえたけど、一体どんなのだろう)
「あう…」
そんな彼を他所に、エリサは、何故か”ばつ”が悪そうに下にうつむいていた。

「こ、これは…。」
暫くしてからテーブルに置かれたモノを見て、彼は二の句が告げなくなっていた。
置かれたのは、少し大きめのグラスにアイスソーダとサクランボが入ったというシンプルなものだった。
中身は、の話ではあるが。
付け加えると、そのアイスソーダにはストローが刺さっているのである。
それは、二つのストローが一つに合体されたタイプ。そして、その合体された形状は御丁寧にハート型に見えなくも無い。
(な、なるほど、だからダブルハート…)
ここで、彼は品名の所以を理解するのだった。
「で、エリサ」
彼は、これを注文した当の本人に声をかける。
しかし、そのエリサは置かれた件のジュースを見てボーッとしていた。
更に、顔はかなり赤くなっている。
「…エリサさん?」
「…はっ。な、なんだべ?」
彼がもう一度呼ぶと、やっと我に戻ったらしい。
目をそちらへと向く、のだがすぐに泳がせてしまう。
流石に、このジュースを見て恥ずかしがってるのは彼にも理解できた。
「その、これが飲みたかったんだよね」
「ん、んだ」
エリサが頷く。その顔は、まだ赤い。
彼は、少しだけ。本当に少しだけジュースを見つめた。
それだけだった。
「じゃあ、飲もうか」
「えっ」
エリサが呆気に取られた声を出すと同時に、彼の口はもうストローへと向かっていた。
咥える直前、
「いっただき」
と一言残して、彼はストローからジュースを口へと運ぶ。
しかし、一気に飲むわけでは無く、少しだけ含んでからすぐに口からストローを離した。
その口に含んだジュースも、すぐに喉の奥へと流される。
「うん、美味しい。エリサも飲んでみようよ」
そう言って、彼は微笑んだ。
それを見て、呆気に取られていたエリサの顔がすこしずつ崩れ
「…ぷっ」
と遂には吹き出してしまったのだった。
「あ、なんだよう。いきなり笑うなんて失礼だなー」
「ん、すまねっちゃ。でも、おめさのおかげで余計なものが飛んでっだよ」
「そう?」
「…ん」
そう言ったエリサの顔は、まだ少しだけ赤みは残っているが、先程までの恥ずかしいといった表情は消えていた。
「駄目だっちゃね、折角おめさとこいな関係になれたのに、今更おしょすがるなんて」
そう言って、エリサはストローに口を近づける。
口に咥える直前、わずかに動きが止まる。が、それだけだった。
すぐに、彼女はストローを口の中へと運ぶ。グラスの中のジュースが、ストローを通じて彼女の口の中に運ばれるのを彼は見ていた。
「…確かに美味しいね、このジュース」
彼と同じように、少しだけ飲み込んだエリサが、ジュースの感想を言う。
「うん、見た目は何処にでもありそうな感じのソーダアイスなのにね」
彼も、またストローを咥えた。
先ほどと同じように、ジュースがストローを通じて彼の口内へと入っていく。
「…んだらば」
それを見ていたエリサは、口を開く。
ジュースの方を見ていた彼は、視線を彼女の方へ向けた。
エリサは、微笑んでいた。
「んだらば、こうすれば、もっと美味しくなるかもしれねっちゃよ」
そう言って、彼女もストローを口に咥えた。
一気に二人の顔が近くなる。
彼の目の前には、好きになったエリサの顔が。
エリサの目の前には、好きになった彼の顔が。
エリサの大胆な行動に、面食らった彼は思わず顔を下に向けようとするが、口にストローを咥えている状態では咄嗟にそれも出来ず。
自分でも直ぐに自覚できるくらい、彼女の目の前で顔が熱くなっていくのを感じていた。
恥ずかしい。けれど、それは嫌がるような恥ずかしさではなく、どこか甘ったるいものを感じる恥ずかしさであった。
そんな彼の気持ちを知ってか知らずか、エリサはやはり微笑んでいるままであった。
(…確かに、なぜか美味しくなった気がする)
ソーダの中に入っていたアイスは、知らない内に少しだけ溶けていた。

「ありがとうございましたー」
会計を済ませ、喫茶店の外へ出る。
春の匂いが混じった空気が、二人を包み込む。
暖かくなってきたとはいえ、時折軽く吹いてくる風は少し冷たい。
しかし、先程の事があったので多少熱くなった顔を冷やすには丁度いいと彼は思った。
改めて、思い返す。
(俺達は、卒業した。)
(エリサに告白されて、進路も決まった)
しかし、ここから先どうなるかは、分からない。分かるわけがない。
(学も、正志も。エリサの親友であるふみちゃんも都子も祝福してくれた)
けれど、今できることなら分かる。
「エリサ」
そう一言、彼は彼女に向けて手を差し出す。
エリサは何も言わず、微笑んでその手を握った。
「               」
同時に、彼女が彼に何かを言った。
それは春の風に紛れて、遠くからでは良く聞こえない。
しかし近くに居た彼には聞こえていた。
「うん。」
と彼は頷き、そして二人は家路を行くのだった。
そんな二人に付いて行くように、春の風が、優しく吹いた。


「ありがとうございましたー」
学生服を着た男の子と、着物を着た女の子が会計を済ませ、外へと出て行った。
その様子を遠巻きに見ていた一人の中年男性―喫茶店のオーナーは、どこか、嬉しそうな顔をしている。
この男、先程外へと出て行った二人を入店していた時からずっと気にかけていたのだ。
それもその筈、ちょくちょくこの喫茶店へやってきていた二人の事を覚えてしまったオーナーは影ながら二人を―もう付き合っているのか、そうでないのかは無視して―応援していたのである。
遠巻きから見ていたとはいえ、長年の人生経験からか、彼らの関係がどういった展開を迎えたのかは、大まかに感じ取っていた。
―ふむ、どうやら行き着くところまで行ったんだね。
もちろん、何も知らない上での憶測ではあったのだが、どちらにしろ先程のやり取りを見るに進展したのは間違いない、とオーナーは確信している。
何はともあれ、中々印象的なカップルの誕生だと微笑ましく思うのであった。
(それにしても)
それにしても、他に、オーナーは思うところがあった。
それは、金髪の女の子が着ていた着物。
(着物を着て、接客…というのも悪くはないのかもしれないね)
最近、自身の店にマンネリを感じてきていたオーナーは、何かしらデカい事をしようと暇があれば考えていたのである。
その時に、一つのインスピレーションが今舞い降りてきた。
「ふむ、これは、つぐみに頼んでみても良いかもしれないな。OKがでれば、一緒に真希ちゃんも誘ってみよう」
それが成就するかどうかは、また別の話ではあるのだが。


きっと続く(二人の関係は)


あとがき

おそらく一番初めに書いたときメモ4 SS。
・・・けど、今までお蔵入りになっていたという。自分もエリサと同じように自信が持てなかっただけなんだけど、やっとこさ陽の目(出たときは宵の口だったが)を見れて良かったよ。
やっぱりエリサは可愛いです、エリサ凛々しい、エリサ乙女。エリサズキュゥゥゥゥゥゥゥン・・・これはエリナか。

話のシチュですが、喫茶店での追加デート、これのやり取りを見て「絶対に書きたい!」という俺の意欲がすぐに湧いてきたのです。ここから先は言うまでもなかった。(分かる人には分かるかな)
ちょいとシチュエーションやセッティングが強引だったかもしれないけど、始めだから、という言い訳も添えて強引に納得しておくことにしようw つぐみパパもオマケ程度にゲスト出演。つぐみちゃんの某イベントで面白いくらいに、脳内でキャラが出来上がってたなぁ、この人もw他の何かで書くときも機会があれば出したいかもしれない。

兎にも角にも、今回出すきっかけとなったツイッターのとあるフォロワーさんに感謝。きっとあの一言がなければずっとホコリに埋もれたままだったろうな・・・。
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by Horyday | 2010-09-18 03:48 | 小説


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