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2010年 07月 14日
※このSSはフィクションです。 ※登場する人物、地名、団体名(んなもの出ねえ)、犬人間は架空のものです。 ※メッタメタな内容ですが無粋なツッコミはナシにしましょう ※「中盤からだけでよくね?」というのは結構凹むので思うだけにしておきましょう。 ※郡山先輩お誕生日おめでとうございます ![]() 郡山 知姫は、まどろみの中に居た。 どうしてなのか?彼女はそう考えたが独特の、ぐにゃりとした感覚が頭を駆け巡り、うまく働かない。 しかし、この感覚は悪くはない。たまに意識して味わうそれは、非常に心地のいいものでもあったのだ。 そんな彼女の背中に、ふっと何かが被せられる。 そこで、彼女はひとつ思い出した。 (そういえば、私は机に向かって寝ていたのね。) それはここ最近の実験によるものなのか、学業によるものなのか。おそらくはどちらかもしれない。 (ところで、今、私の背中に何かを被せたのは、誰?) そして彼女は気になった。背中に”何か”を被せた”誰か”の存在に。 だから起き上がる。少しずつ、背中の”何か”が落ちないよう、手で握りながら。 「ん…。」 目を開くと、そこは見慣れた机と化学用器具、棚、黒板。 彼女が良く利用していたきらめき高校の化学室だった。 そして今は夕方らしい。窓からは、オレンジ色に変わっている陽の光が差し込み、影と共に室内を彩らせている。 「私は…。」 「おや、目が覚めましたか。」 彼女の後ろから、ひとつの声。それは男の声で、しかし聞きなれた声ではない。 「誰?」 そう彼女が振り向くと、そこには常識を逸脱したモノが立っていた。 まず毛がフサフサだった。そして顔は、これは誰もが見知っている存在である動物の…犬のものであった。 しかし、そのモノはそんな顔をしているクセに二足歩行で立っているし、しかもご丁寧に服を-下のベストを覗かせながら、スーツをラフに着こなしているが、どこか渋い魅力を感じさせる-を着ている。 「…。」 当然、そんなモノを今まで見たことが無い彼女は唖然とするしかない。 「初めまして。」 そんな知姫を置いてけぼりにするように、彼(?)は丁寧にお辞儀をする。 流石に冷静すぎる彼(?)を見て、彼女は思わず声が出る。 「こ、これは夢…?夢よね…。い、犬が立って喋ってるなんて…。」 「これは随分な挨拶だ。まぁ、そう思うのも仕方ありませんが。」 肩を竦めながらも、彼(?)はやはり冷静で居る。 「…ええと、これが現実なら貴方は一体?」 彼(?)の冷静な態度に当てられてか、彼女の混乱が徐々に落ち着いてくる。 そこで、手に握っている”何か”の存在を思い出す。 見ると、それは黄土色のコートで、ケープが特徴的であった。 「これは貴方が?」 「ええ、今は暑い季節ですが、油断してると風邪を引きますよ。」 「それでも、この時期にこういうコートもどうかと思うわ…でも、ありがとう。」 いえ、と彼が首を振った所で、知姫は話を戻す。 「それで、貴方は一体誰なの?少なくとも、人面犬は知ってるけど犬面人間は見たことが無いわ。」 その問いに、彼(?)は先程のように肩を竦める。 「そんな事は、別にどうでも良い事だと思いますがね。」 「どうでも…って、生物学的にかなり新発見だと思うのだけど。」 「それは、私から見ても同じことですよ。…これは多分、ちょっとした神様の気まぐれなんじゃあ、ないですかね。」 「気まぐれ?」 「私には、あなたの不安が伝わってきたのですよ。”彼は、私のことを忘れてないだろうか”と。」 「!」 それは、正に最近の知姫が思っていた事、そのものだった。 そして気づく。 「…そういえば、何で私は”ここ”に居るの?」 きらめき高校の化学室-そして、そこの制服を着た知姫がそこに居るのは”ありえない”事だ。 なぜなら、彼女は去年卒業してしまっているのだから。 「ここは、あなたの気持ちの表れなんでしょう。”あの時のままで居たい”という。」 彼の言葉を聞いて、彼女は思う。 (確かに、私は時々この頃に戻りたいとは思ってた。けど、それは表面だけで…本当は心の奥底で願ってる事だったの?) 卒業して数カ月が立つ。きらめき高校在学時代に仲良くなった”後輩クン”とのデートは、最近頻度が減ってはいるが、まだ続いている。 しかし、不安だった。きらめき高校という二人の繋がりを作る-作ってくれた-場所、そこに自分が居なくなった事で、彼の興味はどんどん薄れているのではないのかと。 「しかしここには矛盾がある。…それは解るかね?」 それは言われなくても、十分に解る事であった。 ”彼”が居ないのだ。自身が2年の時に見初め、様々な実験に付きあわせたり、デートに付き合わさせられたりした、男の子。 ”私の望む場所”のというのなら、彼は居なくてはならない存在だ。 けれど、居ない。それは…。 「貴方のさっき言っていた言葉の意味が、ここという事なのね。」 「そういう事ですね。私としては悲しい話ですが。」 いつの間にか、彼(?)はどこからか出したパイプを口に咥えていた。だが、火は付けてないようで、煙は出ていない。 「悲しい、って?」 「彼の事を信頼してないからですよ。他人事ですが、私はあなたと彼の繋がりを信じていますからね。」 「信じています…って、何でそんな事が出来るの?」 「なんででしょうね。」 「ふざけないで。」 「ふざけてなんか居ませんよ。けれど、私は信じています。だから…」 彼(?)は、ポケットから何かを取り出した。 それは花だった。誰もが見慣れた種類の花だ。 「バラ…?」 「どうぞ。」 差し出されたそれを、知姫は受け取る。 造花ではない、生花だった。先程、水を貰ったばかりなのか、夕日が花びらに点々と付いた水滴を反射している。 そして、ちくりとした感触が、指から広がってきた。 「折角ですから、貰っておいてください。ささやかなプレゼントですよ。」 「プレゼント…って、どういうこと?」 「それは、”彼”に聞いてあげてください。」 その言葉に対して、知姫がまたも聞き返そうとした時、突然周りの風景が歪む。 「な、一体どうしたのこれ!?」 「どうやら、お別れの時間のようですね。」 慌てる知姫とは対照的に、やはり彼(?)は冷静だった。 咥えていたパイプをしまい、知姫が持っているコートを取る。 「出来れば、もう少しあなたとは話がしたかったんですがね。やはり、ここまでが限界ですか。」 「ちょ、ちょっと。なんでそんなに冷静なのよ!大丈夫なのここ?…それ以前に、ここは一体どこなの?」 「心配しないでください。そうですねぇ、ここは言ってみれば夢と現実の境目みたいなものですよ。恥ずかしい言い方ですけどね。」 「夢と現実の…って、それは一体…う。」 そこからは、もう言葉が続かなかった。 知姫の頭へと、ここで目覚める前のようなまどろみが襲いかかってきたのだ。 思わず膝をついたが、膝に床が当たる感覚が無かった。 更に空間が歪み、元々机だったのか、棚だったのか、それとも実験器具だったのか、”彼”だったのか…どれがどれだか、見分けが付かなくなる。 「今の状況は、いわば夢から覚めるようなものですよ。」 しかし、”彼”の声だけは知姫の耳へと確かに届く。 「こういった事は今日みたいな特別な時くらいでしょうね。次回あるかどうかは解りませんが、出会えて光栄でしたよ。…ああ、それと最後に。」 「そういう風に悩む女性というのも可愛いものですが、過度は禁物ですよ。あなた達の関係も角が立つかもしれない…なんてね。」 そこで、彼女の意識は一旦途切れた。 ・ 「ん…。」 少しのまどろみの後、郡山 知姫は目が覚めた。 机につっぷしていた体を起こし、周囲を見渡そうとした時、体から何かがずり落ちるのを感じた。 思わず、それを手に取ると、それはジャケットであった。男性用ので、明らかに自分が着ているものではない。 (下手な小説、って訳じゃないのね。けど、それじゃあ誰が…。) 改めて周囲を見ると、すぐ隣の席-彼女は大学の講義室に居るのだ-に、見慣れた顔の”後輩クン”が、頬杖をついて目を瞑っている。 (…。) その彼を、知姫は起こそうとして手を伸ばすが、一瞬戸惑った後、改めて彼の肩に手をおいた。 そして体を揺らす。 「後輩クン…。」 「ん、ふぁ!?」 なんとも、可愛い声を出して彼は目を覚ました。そして知姫の方へと顔を向ける。 「あ、知姫さん、起きたんですね。」 そして互いの視線が交差し、知姫は思わず顔を背けそうになったが、耐えた。 知姫は努めて冷静に、いつもの態度と口調で接しようとする。 「…どうしたの、この時間に。私を訪ねてくる理由なんて、あったかしら。」 言ってから知姫はしまった、と思った。 思わず、少しばかりではあるが険のある言い方になってしまったのだ。 (これじゃ、拗ねてるみたいじゃない。…実際、その通りだけど。) お陰で自己嫌悪に襲われかける彼女ではあったが、彼は苦笑しながら指で頬をかくだけだった。 「いやぁ、どうしても今日は逃せなかったんで。だから待ってたんですけど、出てくるのが遅かったから、色んな人に聞いて探しましたよ。」 そう言いながら、彼は一緒に持ってきていた学生鞄とは別に、小さな袋を取り出した。 更にその中から、白い箱が一つ出てくる。 「これは?」 箱を不思議に見つめる知姫に、彼は微笑みながら「開けてください」と言うだけだった。 知姫は、言われるままにその箱をゆっくりと開ける。 「…!これ…。」 その中に入っていたのは、白いバラだった。 いや、バラの形をしたクリームが乗ったケーキだった。 「今日は知姫さんの誕生日でしょう?だから、頑張って作ってきたんです。…お菓子づくりなんて初めてだから、かなり練習したんですけどね。」 へへ、と笑いながら、彼はまた頬をかく。 照れたりすると頬をかくのは、彼の無意識によるクセだった。 「…ああ、そっか。そういえば今日は私の誕生日だったのね。最近、大学の事に夢中ですっかり忘れてたわ。」 「忘れてた、って。先輩、さすがに自分の誕生日くらいは意識しておきましょうよ。今日だって、俺が頑張ってケーキを作ってきたのに。」 「あっ、それはごめんなさいね。まさか、プレゼントにこんなに力を入れてくれるとは思わなかったから。」 知姫の言葉に、彼は少しだけ得意げな顔になる。 「でしょう?へへ、先輩の誕生花がバラって知ってたんで、だったらこういうのが丁度いいかと思ったんですよ。ただ、色を赤に出来なかったのが惜しかったですけど。」 「赤?」 「確か色毎で花言葉が変わるらしいんですよ。で、赤が”美”って意味というのを聞いたことがあったから、綺麗に当てはまるかなぁと。」 「なるほど、そういう事だったのね。」 その言葉を聞いて、知姫は色々と納得がいった。 つまるとこ、バースデイケーキと誕生花を上手く合わせて洒落を利かせたのだ。 そして”彼”と別れる前に聞いた、あの言葉の意味も。 「…後輩クンにしては、随分と生意気なプレゼントじゃない?うりうり。」 正直なところ、知姫はこのプレゼントが嬉しかった。プレゼントもそうだったのだが、それ以上にバラの事がある。 知姫はバラの色の事を聞いて、ある事を思い出したのだ。 白いバラの花言葉は…「尊敬」、そして「私はあなたにふさわしい」。 -彼は、その事を知っているのかしら? おそらく、この様子を見るに知らないとは思う。 けれど、彼がそれを知っていようが知らないでいようが、今の自分の気持を表情に出すのは照れるので、それを隠すように彼の額に握りこぶしを軽く押し当てる。 彼は、そんな彼女の心中に気づかず、じゃれてきている知姫の拳を笑いながら受けている。 「…けど、ありがとう。お陰で元気が出そうだわ、最近、ちょっと落ち込んでいる事があったようだから。」 「そうなんですか?それだったら、気にせず相談でもした方が良いですよ。…例えば、その、俺とか。」 「後輩クンに?」 「ええ。」 -誰か、ではなく俺に。 その言葉は、更に知姫の心を軽くした。 そして、先程までの自分を恥じる。確かに、”彼”の言った通りだったのだ。 「後輩クン。」 「はい?」 「…ちょっと、後ろを向いてくれる?」 知姫の唐突な言葉に、彼は素直に後ろを向いた。 彼の大きな背中が、知姫の瞳に映る。 「えと、これでいいですか?」 その言葉に、知姫は答えない。彼に気づかれないように、ゆっくりとその背中へ近づく。 そして、 「わ、わわっ。」 優しく、彼を抱きしめた。 「あ、あきさん…?」 思わず声が裏返る彼だったが、それに構わず知姫は抱きしめ続ける。 「…嬉しかったから、これは特別にご褒美よ。こんな事、滅多にしてあげないんだから光栄に思いなさい。」 そう言う、知姫の顔は真っ赤に染まっていた。 けれど、この状態なら彼には見えないし、それに今は夕方だ、離した後でもオレンジ色の夕陽の光が上手く彼女の顔を隠すように照らしてくれる。 (だから、良いの。) 知姫は、そう開き直ることにした。 暫くして、抱きついていた彼の体を解放する。 「さっ、帰りましょう。よくよく考えたら良い時間じゃない。」 先程の事がまるで無かったように、彼女はそそくさと教室を出ようとする。 それは、やはり彼女なりの照れ隠しでもあったのだが。 だが、彼はさっきまでの”ご褒美”が強烈だったのか、未だに固まっていた。 「ねえ、後輩クン。」 知姫が、隣を歩く彼に声をかける。 二人が今歩いているのは、家への帰り道。 夏の季節は太陽が沈むのが遅く、夕陽が未だ二人を照らしている。 「なんですか?」 「キミって、夢の中っていうの、考えたことがある?」 「夢の中、ですか。ううん…いえ、無いですね。それが、どうかしたんですか?」 「…ちょっと聞いてみたかっただけよ。ごめんね、唐突に。」 謝る彼女に、彼は小さく首を振った。 それを見た知姫は小さく微笑み、次に指を見る。 -あの時、”彼”が渡してくれた赤いバラの花。 確かに感じた、棘の痛み。 そして彼との会話を思い出す。短かったけど、彼女の不安を取り除く一因となってくれた。 一体なんのために、誰が、どうやって。 疑問は出てくるが、過ぎてしまった以上はどうする事も出来ない。 それに恐らく、もう二度と同じ様な事は起きないと知姫は思っている。 だから、これは”きっかけ”だったのだ、と納得することにしたのだ。 自分が、彼を信じ直すきっかけなのだと。 「…それとも、神様の気まぐれね。」 「え?」 ポツリと漏らした知姫の言葉に、彼は不思議な顔をした。 「なんでもないわ」と彼女は彼に微笑んだ後、唐突に手を繋ぐ。 「あ、知姫さん?」 「今日は機嫌がいいから、ね。」 二人は、家路を行く。 ”これから”を誰かが解るわけではない。けれど、今までよりかは前向きに見れる。 知姫は、左手に感じる彼の温もりを感じながら、そう思うのだった。 A To 餓鬼 ウルトラ脳内ファンタジーワールド展開中。 読んでもきっと「?」と思うこと請け合いだと思われるが、まぁ元々自己満足用なので、気にしないでおこう。 正直、起きた後の話しだけでよかったかもしれない。とかそういうのはダメでしょうか。 途中で出てくる犬面人間は、最近見てるアニメからの引用。立場としては、かなりアレな役だけど。 CV:故 広川太一郎氏 この人の声は好きすぎて聞くたびに股を濡らしてます。イメージで。 知姫さん可愛いよ知姫さん。 by Horyday | 2010-07-14 23:54 | 小説
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